現役転職エージェントが明かす!転職エージェントの裏事情
転職エージェントのキャリアコンサルタント、と聞くと皆さんはどのような印象を持つでしょうか?
- 「ハローワークのように求職者を企業に紹介する仕事」
- 「求職者のキャリアアップを実現するためにコンサルティングを行う」
と思われる方が多いかもしれません。そのイメージは誤っていませんが実態は大きく異なります。
現役の転職エージェントが実情や裏事情を紹介します。
転職エージェントの現状と仕組み
まず、転職エージェントを取り巻く現状や、転職エージェントのビジネスがどのように成り立っているかを解説します。
転職エージェントの現状
現在、日本にどのぐらいの転職エージェントが存在するのでしょうか?厚生労働省の統計結果では、平成29年度の職業紹介事業所は全国で21,867箇所です。職業紹介の事業所はここ数年毎年増え続けています。
平成23年度の事業所数が17,441ですので、6年間で4,000事業所以上増えているのです。職業紹介事業は認可制なので誰でも自由に行える、という訳ではありませんが、それでも参入しやすい事業であり、非常に競争が激しい業界です。
因みに、平成29年度の日本の職業紹介業の手数料総額はおよそ4,394億円です。
職業紹介を行っている2万を超える事業所のうち、東京・神奈川・愛知・大阪でおよそ1万の事業所が存在します。都市圏に集中しているビジネスと言えます。
(参照:「平成29年度職業紹介事業報告書の集計結果」厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/11654000/0000190329_1.pdf )
転職エージェントのビジネスの仕組み
転職エージェントはどのように売上を立てているのか、その仕組みを説明します。転職エージェントのビジネスは、求人企業に登録者を紹介し、その登録者が入社した段階で手数料を受け取る、という至ってシンプルなものです(完全成功報酬制です)。
手数料額は登録者の初年度の理論年収の30~35%の金額、が一般的です。
もし契約が30%の企業に対して年収600万円の方が入社した場合、180万円を手数料として転職エージェントが受け取ることになります。
キャリアコンサルタントは「コンサルタント」ではない!
転職エージェントに在籍しているキャリアコンサルタントやキャリアアドバイザー。「コンサルタント」「アドバイザー」と聞くと響きがよくスマートなイメージを持たれるかもしれませんが実際は泥臭い世界です。
転職エージェントの実情を紹介します。
キャリアコンサルタントは結果が全て
「転職エージェントは手数料ビジネス」と前述しました。「ビジネス」ですので企業に紹介した登録者が入社してもらわなければ収入がありません。いくら企業に有効な人材活用の提案をしても、転職希望者にキャリアアップのアドバイスをしても成約しない限り売上は「ゼロ」なのです。結果が評価の全て、というわかりやすくはありますが厳しい世界です。
結果を残さなければいけませんのでキャリアコンサルタントは日々、数字に追われています。売上目標はもちろんのこと、面談数や求人案件の獲得数、企業への書類推薦の数、面接設定数や内定辞退率といった日々のKPIを常に意識しながら活動を行っています。
難しいのは「いくらKPIをクリアしても(数をこなしても)確実に成約できるわけではない」ということです。転職エージェントが取り扱う求人案件や登録者は全て唯一無二のものですので、「こうすれば成約する」という方程式が存在しません。
KPIをクリアしても全く成約しないということが多々あります。逆に、KPIをクリアしなくても何件も成約する、ということもありますが。
キャリアコンサルタントになるためは?特別な経験や資格はいるの?
キャリアコンサルタントになるために資格が必要ではありません。何らかの業界知識をお持ちの方やある程度のキャリアをお持ちの方であれば、極論、「誰でも」なれます(新卒のキャリアコンサルタントも存在します)。
ただ、キャリアコンサルタントには「コミュニケーション力」「一つの案件に対して丁寧に仕事が出来ること(一つ一つケースの異なる紹介作業を行うので)」「目標達成意欲の強いこと(結果が全てなので)」が必要です。因みに、転職エージェントのコンサルタントは営業出身者の方が多く、さらに、ビジネスの性格上有形商材よりも無形商材の営業出身者が違和感なく取り組めるようです。
キャリアコンサルタントのキャリアアップとは?
キャリアコンサルタントのキャリアアップとしてはひたすら紹介を続けていくスペシャリストかマネジメントを行うかの2つしかありません。
キャリアコンサルタントは結果でしか判断されませんので。高く評価されるキャリアコンサルタントは「いかに多くの紹介実績があるかどうか」です。人事コンサルタントになれる、ということはまずありません。
転職エージェントはどのような目で転職希望者を見ているのか
転職エージェントは転職希望者(登録者)をどのような観点で見ているのでしょうか?大前提として「転職エージェントは企業からお金を受け取っている」が根底にあります。
登録者は「商品」?
転職エージェントにとって、登録者は「企業に紹介して手数料をお支払いいただくための商品」と言っていいでしょう。転職エージェントが登録者に対して転職サポートを行っているのはキャリアコンサルティングが目的ではありません。あくまでも「企業に紹介して入社してもらうため」です。
未経験分野へのキャリアチェンジを希望している人へのサポートは難しい
未経験分野へチャレンジしたいという転職希望者に対して転職エージェントは「希望を叶えることが難しい」、と考えています(非常に高いポテンシャルをお持ちの方は除く)。基本的に中途採用=即戦力採用です。
企業が転職エージェントに求人を依頼する目的は「即戦力で活躍が期待できる人材を紹介してもらうこと」です。転職エージェントを利用して転職活動を行う際は、実務経験を活かせる案件でないと応募ができない、と考えた方がいいかもしれません。
大幅な年収アップを実現することは難しい
転職エージェント経由で転職する際、給与の交渉はエージェントと企業との間で行われますが、給与は候補者の現職もしくは前職の給与をベースに、さらに企業の予算や規定によって決定します。
例え年収アップを希望していても、根拠のない大幅な年収アップは難しいとお考え下さい。
企業の希望 > 登録者の希望?
企業の希望と応募者の希望、理想の転職(採用)を実現するためにはお互い出来る限り希望を通したいものですが、転職エージェントは基本的に企業の希望を優先する、とお考えください。これは転職エージェントの収入源が企業だからです。
例えば入社時期です。内定が出た候補者に対して、企業の希望の時期に入社してもらおうと強引に決断を迫ってくるエージェントも存在します。
転職エージェントが感じているメリット、デメリット
転職エージェントに働いていて良かったと感じる点や大変だと感じている点を紹介します(あくまでも私見です)。
メリット① 様々な業種業界、ポジションの人と出会える。ネットワークが築ける
まずはメリットです。様々な方々とお会い出来る、一緒にお仕事ができる、ということは転職エージェントの魅力です。普通ではお会いできない経営者の方からお悩みを聞けることもありますし、勢いのある新興企業と出会い、新しいビジネスを知ることもでき知見が広がります。
また、企業とも登録者ともきちんとお付き合いができれば、自身のネットワークを構築することができます。
メリット② 一生続けることができる
転職エージェントの仕事には体力は必要ありませんし自己完結出来る仕事です。経験さえあれば一生続けていくことができます。転職エージェントの仕事がなくなることはありません(むしろ事業所は増えています)。「食いっぱぐれのない仕事」と言えるでしょう。
デメリット① 成約が決まらない限り評価されない
次に大変だと感じる点です。いちばん大変だと感じる点は、成約しない限り評価されないことです。転職エージェントのビジネスは「ゼロか100」です。
いくら数をこなしても、丁寧に仕事をしてもそのことに対して対価が支払われることはありませんし、エージェントがいくら頑張っても企業と登録者の事情で話が進まないことが多々あります。成果がでないと虚しくなることもあります。
デメリット② 仕事にきりがない
転職エージェントの業務は膨大に存在します。企業の求人開拓、転職希望者の面談、マッチング作業があり、選考が進めば面接のセッティングやサポートやアドバイスなどを行います。
人を取り扱う仕事ですので手を抜くこともできません。転職エージェントの業務は果てしなく続きます。夜遅くまで、また休日も業務を行っている方は多いでしょう。
転職エージェントが伝授する転職エージェントと上手く付き合うための方法
転職希望者が希望の転職を実現するために転職エージェントと付き合いにはどうすればいいのでしょうか?転職エージェント側の観点で説明します。
希望はしっかりと伝える
転職エージェントに転職の希望ははっきりと、本音で伝えてください。その希望が実現するかどうかは分かりませんが、転職エージェントが登録者の本音を知ることができれば志向を把握できます。志向が把握できればより希望に近い案件を提案することができます。
社会人としての付き合いをする
転職エージェントも人間です。いくらビジネスとはいえ連絡しても返信がなければその方に対してお手伝いしようというモチベーションは下がります。
無断キャンセルなど約束を守らない人に対しては、案件を紹介することもなくなるでしょう。転職エージェントに媚びる必要はありませんが、社会人としての自覚を持って付き合ってください。
状況に変化があれば情報をアップデートする
転職エージェントに登録してもすぐに転職できない可能性もあります。中長期的に転職エージェントと付き合うこと担った場合、自身のキャリアに変化があった場合(例えば昇進や転職に資格を取得するようなこと、など)転職エージェントに報告しましょう。紹介可能な案件が増える可能性がありますし、転職エージェントに存在をアピールすることができます。
転職エージェントには日々新規の転職希望者が登録しています。数多くの登録者に埋もれてしまわないように、忘れられないように努力をすることは必要です。
まとめ
転職エージェントの裏事情を紹介しました。ご理解いただきたいのは「転職エージェントはビジネスである」ということです。
求職者からすると転職エージェントから「商品」として思われることにいい気分ではないかもしれませんが、理想の転職を実現するために転職エージェントの性質を理解し、うまく利用しながら最終的に「Win-Win」となるような付き合い方をおすすめします。